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相続税法の改定(2018)

相続税法の改正で知っておきたいポイントとは?
2018年7月に相続税法が改正されました。正確な名称は「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」の改正です。本改正を行うことで、万が一、家の所有者が亡くなった後も配偶者は家に住みやすくなります。また相続についても、これまで遺産分割で起きていた課題などが解決されやすくなりました。

そこで本稿では1980年以来の改正となる相続税法とそのポイントについて説明します。

■従来の相続税法の問題点

1980年以降、相続税法は大きな改正を行っていませんでしたが、その間、高齢化の進展をはじめ、社会情勢は大きな変化を遂げてきました。その結果、配偶者が亡くなった後の居住権など、生活の実態に見合わない部分が出てきたのです。例えば家の所有者の父親が亡くなった後、高齢となった母親がその家に住み続けられるかという問題が挙げられます。

本改正は、このような状況から配偶者を保護することがテーマの一つです。ほかにも遺言方式の緩和をはじめ、より実態に即した相続ができるよう施行された制度であるといえます。

■配偶者居住権とは

本改正の一つである「配偶者居住権」とは、遺産分割を行う際の選択肢の一つです。配偶者居住権は、土地や家などの所有者に先立たれた場合、配偶者が一定期間これまで使用していた建物に住み続けられる権利を指します。例えば家の所有者である父親が亡くなり、配偶者と子どもが複数人いた場合、父親の財産は配偶者と子どもを含めた法定相続人全員で分割協議をすることが必要です。

そうなると場合によっては、母親は家に住み続けることができなくなるおそれも出てきます。配偶者居住権とは、このような事態を回避するために設けられた制度です。本改正では建物の権利を「負担付きの所有権」と「配偶者居住権」とに分割します。この場合の「負担」とは、建物に配偶者が住んでいることを指しています。

そのため建物の所有権を持っている相続人であっても配偶者が住んでいる限り、建物を売ったり貸したりすることはできません。またその分建物の評価額が低く押さえることができます。その結果、配偶者はこれまでの建物に住みつつ、現金や有価証券などほかの財産も相続しやすくなるため、将来の生活費に充てることができるようになるという仕組みです。

■遺産分割の持戻しと預貯金の払い戻し

本改正は配偶者保護の観点に主眼が置かれています。これは本改正のポイントである「遺産分割の持戻し」や「預貯金の払い戻し」についても同様です。「遺産分割の持戻し」とは、例えば生前に持ち家などを配偶者に贈与したとしても、所有者の亡くなった後、相続を行うにあたり持ち家などを遺産として事前に受け取ったとみなされてしまう制度のことです。

このため配偶者の将来を心配して事前に贈与した財産であっても、いざ相続が始まり遺産分割が行われる際には贈与財産も遺産として戻されてしまっていました。そこで本改正においては、配偶者が贈与の趣旨に則って多くの財産を取得できるよう、これまで生前贈与とみなされていた分を遺産の先渡しとは取り扱わないよう見直しが図られたのです。

また財産を持っていた被相続人が亡くなった後、これまでは遺産分割が行われるまで預貯金の払い戻しができませんでした。この結果、配偶者の生活に不備が生じたり、葬儀費用の捻出ができなくなったりするなどの懸念がありました。「預貯金の払い戻し」はこのような課題を払拭し、被相続人の預貯金を遺産分割前でも下ろせるように便宜が図られたものです。

■ほかにも広範にわたる改正点が

今回の相続税法の改正は、現代の実情により即した内容となっています。これまでは自筆証書遺言を作成するにあたり、全文を本人が手書きで行わなければなりませんでした。この中には財産目録なども含まれており、高齢者が行うには大きな負担になっていた一面があります。しかし本改正ではパソコンによる財産目録の作成が認められ、また通帳のコピーを添付することも認められるようになりました。

ただし偽造防止のため、本人の署名と押印は必須ですのでこの点だけは忘れないようにしておきましょう。

■緩和要件と内容の変更を精査しておこう

本改正では上記のほか、相続に関するさまざまな見直しが図られています。法務局を利用した遺言の保管方法や不動産など共有しにくい財産の遺留分制度の請求など、細かな点を含めてさまざまです。そのため万が一相続を行うのであれば、事前にしっかりと改正内容を押さえておくことが必要といえるでしょう。

(提供=Dear Reicious Online/ZUU online)

相続税法の改正で知っておきたいポイントとは? - 記事詳細|Infoseekニュース

 

改正相続法、思わぬ課税も
遺産争いや配偶者居住権
2019年9月21日 2:00
民法の相続規定(相続法)が7月に大きく変わったのに伴い、相続の際の税金の取り扱いにいくつか変更があった。改正相続法は相続トラブルの回避に主眼を置くが、よく理解しないまま制度を使うと思わぬ税負担が発生しかねない。


現金請求に一本化
税金の取り扱いでまず注意したいのが「遺留分」についてだ。遺留分とは、配偶者や子などの法定相続人に保障された、遺産をもらえる最低限の取り分のこと。配偶者は4分の1などと決まっている。遺言に偏った配分が書かれていた場合、遺留分より少ない取り分の人は権利を主張することができる。

不足分を他の相続人に請求しても、分けられる現預金がない場合、自宅の不動産などを共有にすることが多い。共有財産の分け方を巡るトラブルは多く、弁護士の上柳敏郎氏によると「裁判になり解決に数年かかることも珍しくなかった」という。

7月の法改正で変わったのは、遺留分に満たない分について現金で請求することになった点だ。相続人同士のトラブルは減りそうだが、思わぬ税負担が生じる可能性があるという。具体例で見てみよう(図A)。

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これは総額8000万円の遺産を3人の法定相続人で分けるケースだ。問題は次男の取り分。遺留分は遺産全体の8分の1、1000万円だが、遺言には預金500万円としか書かれていなかった。

改正法に基づき、次男は長男や母親に「現金で500万円を払え」と請求する。しかし、長男らの手元に現預金がない場合はどうか。現預金の代わりに不動産などで弁済する「代物弁済」という方法があり、このケースでは長男が相続した自宅以外の土地1500万円のうち500万円を次男名義にした。

結果的に改正前と同様、不動産を共有する形だ。一見、妥当にみえるが「遺留分を満たすために遺産を共有にすると譲渡税がかかる場合がある」と辻・本郷税理士法人の浅野恵理税理士は指摘する。遺留分紛争の解決は現金に一本化されたため、不動産を共有すると実際は売っていなくても税制上は売ったとみなされるという理屈だ。

図Aのケースでは長男が1500万円の土地のうち、次男に与えた500万円分が不動産の譲渡所得とみなされ、長男に課税される。法改正前には必要なかった税金だ。

このような税負担を避けるためには「そもそも遺留分の争いが起きないような遺言にすることが大切」(上柳氏)。ランドマーク税理士法人の清田幸弘代表税理士は「もし争いになったら代物弁済ではなく、現金で解決する必要がある」と話す。

もう一つ、改正法の目玉は2020年4月に創設される「配偶者居住権」だ。例えば夫に先立たれた妻に与えられる権利で、夫の死後も家に終身住み続けられる権利のことをいう。国税庁はこの税金の取り扱いについてもすでに明らかにしている(図B)。

権利放棄は贈与に
居住権には財産価値があるとされるため、夫から妻が相続した段階では相続税の課税対象となる。次に、居住権を持つ妻が亡くなると「居住権自体も消滅する」(法務省)のが改正法の考え方。税理士の岩下忠吾氏は「権利が消えれば財産価値もなくなる」と説明する。つまり、子に居住権の相続税負担は生じない。

注意したいのは、生前に妻が居住権を放棄したり、妻と子が合意の上で居住権を解除したりするケースだ。例えば妻が老人ホームに入居することになり、居住権を放棄したり解除したりするケースが考えられる。「その場合は妻から子に贈与があったとみなされ、子に贈与税が課税される」(税理士の藤曲武美氏)

司法書士の船橋幹男氏によると「配偶者居住権は老人ホームに入居するなどして、自宅に居住しなくなったとしても持ち続けられる」という。居住権を子が相続する際には相続税がかからないのだから、妻が持ち続けていれば避けられた税負担だといえる。

改正相続法によって従来の知識や常識が通用しない税金の落とし穴が増えた。思わぬ税負担を避けるため、迷うことがあれば税理士にアドバイスを求めるのも一案だろう。

(後藤直久)

改正相続法、思わぬ課税も: 日本経済新聞